『ロシア語のしくみ』を読んでみてロシア語がだいたいどんなものかわかった
次はどんなテキストがいい?
なるべく簡単なステップを踏みたいなら、
コストを抑えて一気に進めたいなら、
『初級ロシア語文法』 黒田龍之介著(三修社)
本書は当サイトのロシア語入門書として強く推薦している『ロシア語のしくみ』を執筆された黒田先生の著作です。
難解でとっつきにくい「文法」という壁を「乗り越えるための“はしご”」のような書籍だと私は解釈しています。
つまり、はっきり申し上げるとこれはいわゆる「文法書」ではありません。
このあたりは黒田先生もまえがきで書かれており、
この本は「参照する文法」ではなく、「読む文法」です。(中略)この本には、特別な使い方などありません。小説と同じように、順番に読んでくださればいいのです。
とあるように、終始やさしい語り口で最後まで飽きずに読ませます。まるでエッセイを読んでいるような新感覚の本です。
この本の対象者は全くのロシア語初心者で(ここまではみんな同じ)、
だと思われます。
本書の特徴は以下の通り。
◇初心者の悩める気持ちを代弁した記載も多く、共感を得やすい
◇最後まで読むことで初級文法の基本が身につく
◇例文はワンセンテンスのみ、非常にシンプル
そして易しいがゆえの弱点もあります。
◆最初に読み方に触れて以降ロシア語にフリガナはない(もちろん発音記号もない)
◆分厚いエッセイのような構成上、重要ポイントを探したり索引から調べたりができない
◆あくまで初級のなかの初級のため、1冊では足りない
◆やや高価
『ロシア語のしくみ』から本格的な文法書に行く前にもう1段階踏んでおきたいという人の、
最初のステップにおすすめです。
『ゼロからスタート ロシア語文法編』 匹田剛監修(Jリサーチ出版)
近年出版された本の中で、
タイトル通り完全初心者向けに書かれているのが『ゼロからスタート ロシア語文法編』です。
監修の匹田先生は別記事の文法参考書として載せている『これならわかる ロシア語文法』の著者。
本書の特徴はこちら。
◇重要ポイントは赤で書かれている二色刷りのため見やすい
◇各ページのイラストに割かれているスペースが大きく、全体的に余白も多い
◇太字、細字、矢印を多用して文章にメリハリがある
◇初心者でも最後までやり通せば、ロシア語の基礎知識は身につく
◇ときどき登場するロシアのコラムが面白い新出単語には発音記号がついている
弱点としてはやはり、
◆フリガナが大きいので邪魔に感じることもある(どうしてもロシア語ではなくフリガナを読んでしまう)
◆次にかならずもう少し踏み込んだ文法書が必要となる
『NHK 新ロシア語入門』 佐藤純一著(NHK出版)
(↑すいません、表紙を取って学習していたため、本体がむき出しの写真です(-_-;))
全50課からなり、学校で授業を受けているかのようにイチから体系的にロシア語を学べます。
初版は1994年で2001年にCDを付属して新たに刊行。その後は増刷を重ねて現在至ります。
大きな特徴としては以下のとおり。
- 一冊で初心者がロシア語の文法や読解、聞き取りに関して体系的に網羅できる、まさに「教科書」
- 一冊で4技能(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)の基礎が身につく
- 発音にかなりの力を入れており、細かい音の違いや発音記号の読み方までしっかりと記載されている(超重要)
- 35課程度までしっかり身につけば初心者でもロシア語検定4級にも挑戦できる(「まえがき」より)
- 最終的にロシア語検定3級合格も目指せる(「まえがき」より)
- 94年が初版だが扱っている内容のテーマはすべてロシアが舞台なので時代錯誤な感じはない
私は35課程度まで学習が進んでいるので、ロシア語検定4級相当の知識は身についているはずです。
『NHK 新ロシア語入門』はこんな人におすすめ
「なるべくお金をかけないでロシア語の勉強ができたらいいな」
書店には本書よりもやさしくて簡単な文法の学習書籍はいくつかあるんですが、
いずれも「あくまで文法の入門書」のため、
結局それだけでは足りずにレベルアップした文法書が必要になると思います。
入門書は『ロシア語のしくみ』で十分と考えているので、
『ロシア語のしくみ』を読み終わったらこの『新ロシア語入門』を始めてもいいんじゃないかと。
『新ロシア語入門』は1課ごとに「見開きページで完結」しているレイアウトになっており、
見開きの2ページ中に、
- 重要センテンス(基本例文)
- ロシア語の長文(読み物、会話、笑える小話など多岐にわたる)
- ロシア語長文の日本語対訳
- 新しい単語集(原型、活用形のほか、発音記号までも)
が例外なく載っています。
そして次ページの見開きでは文法解説と練習問題(解答は巻末)があり、1課につき4ページ構成で進めていきます。
『NHK 新ロシア語入門』の素晴らしい部分は、発音にものすごく力を入れているところ。
発音記号も一つ一つ細かく学べるため、
発音記号さえ身につけば仮にCD音源がなくても、そのロシア語の正しい音の読み方がわかるようになる!
英語でもそうですが、言語を学ぶ上で初心者はどうしてもカタカナに頼りがちになってしまいます。
(だってテキストにカナがふってあるから)
残念なことに発音記号がロシア語に添えられている学習書はあまりにも少ないのが現状なんですよね。
ロシア語は正しく発音しないと全然別の意味になったり、まったく通じなかったりします。
趣味で学ぶだけではなく、実際にロシア語を発してみたいと考えているなら発音記号は必須です。
なお初心者がつまずく点としては、
ということでしょうか。
しかし語学学習で文法を学ぶにあたって用語は必須なので、これはやむを得ないかと思いますね…。
というのも文法用語に関しては、本書独自の言い回しではなくて学習書共通の名前だから。
とはいえ、
初めから難しい用語は出てきませんし、新しい用語が出てきたらその説明があるので忘れたら見直しましょう。
『標準ロシア語入門』 東一夫・東多喜子著 E・ステパーノワ監修(白水社)
『NHK 新ロシア語入門』のさらに古くから活用されているロングセラーの文法書。
『NHK 新ロシア語入門』と大きく違うのは、
ということ。
そのため長文テキストはなく、基本的に会話の例文で文法を学んでいくことになります。
難解な長文がないため抵抗感なくページを進めていけるのは貴重ですね。
本書も1課あたり4ページで完結しています。
本書の特徴としては以下が挙げられます。
◇例文はすべてワンフレーズ式で、読み物は巻末のみ
◇応用例文はすべて会話形式になっている
◇筆記体の書き順、描き方の練習にも触れられている
◇発音記号はない、フリガナのみ
ところがかなり残念な欠点があります。
それがこちら。
◆ロシア語ではていねいな言い方とカジュアルな言い方があるが、ていねいな言い方しか載っていないこと
特にソ連的な古い語彙に関してはロシア人に爆笑されるかドン引きされるかです。
解説が比較的簡単で少なめなので、欠点を理解したうえで学習すれば会話+文法書として最後まで行けるかと思います。