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『名画で読み解くロマノフ家12の物語』で解説付きの名画を堪能できる

中野京子さんの『名画で読み解くロマノフ家12の物語』を読んだ。

 

結論から言うと、読み始めたら止まらないくらい面白かった!

 

以前書いた、『興亡の世界史 ロシア・ロマノフ王朝の大地』はロシア史を体系的に知れる一冊だったが、

本書は歴代皇帝を名画とともに深掘りしていく内容
である。

 

 

中野京子さんは作家、ドイツ文学者であり、名画と絡めた西洋史の物語に関する著書を多く出版している。

中野さんの本はどれも表紙の装丁から目を引き、本能に「あ…読んでみたい…」と思わせる魅力がある。

 

 

べつに西洋史や王族の背景になんら詳しくなくても、挿入画がたくさんあって「大人向け絵本」のように楽しめるからすごい。

 

本書『名画で読み解くロマノフ家12の物語』もそうだ。

なにも知識がなくてもドキドキしながら読める。

 

しかし帝政ロシアに興味があれば、その何倍も面白く読める。

 

気になった方はぜひ手に取ってみていただきたい。

 

ヤナ
電子書籍で読むなら絶対にカラーで読んでね!!

 

目次

『名画で読み解くロマノフ家12の物語』感想

名画で読み解くロマノフ家12の物語

 

人間くさい歴代皇帝たち

 

本書の面白さ、は客観的な事実をもとに、当時の情景や登場人物たちの心境を、中野京子さんが言葉巧みに再現しているところにある。

 

歴代のロマノフ皇帝たちがより人間味を増して登場するのだ。

 

いくつか例を挙げてみる。

 

たとえばピョートル大帝の「ヒゲ税」。

 

ピョートルはやぼったいロシアを嫌い西洋化したいあまり、西洋人にならってヒゲをそるか、せいぜい口ヒゲ程度に整えたかった。

しかしロシア人たちはたっぷり蓄えたヒゲこそ天国への道が開かれると信じている。

 

ヒゲをそるか、税金を納めるか迫るピョートル。

 

しかし国民はヒゲ税を払うことをとる。

 

その結果、

気の短いピョートルは自らハサミを振り回し、身近の臣下たちの顎ヒゲを切りまくった。

 

強引だな!!

 

さらに、

イギリスから持ち帰った抜歯用の鉗子(かんし)を気に入り、歯科医に習ったからと、傍にいる誰彼の口を開けさせて虫歯と見るなり抜きまくったというから、本人の西洋化はまだまだといえよう。

と中野さんはツッコミもいれている。

(※鉗子とは医療用ハサミのこと)

 

もうひとつ、祖母と父のあつれきによって二面性を持ったアレクサンドル一世の話。

 

アレクサンドル一世の祖母はあの女帝エカテリーナ二世。

祖母エカテリーナ二世と父パーヴェル帝はものすごく仲が悪かった

 

アレクサンドル一世は祖母に溺愛され、祖母の望むままの青年に育つ。

一方、父は父で実母であるエカテリーナ二世への反体制を敷く。

 

結局アレクサンドルは二人の争いを見て、体感して、処世術を学ぶことになる。

 

目の前の相手を喜ばせる——それは生涯を通じ、アレクサンドルに見られた特徴、いや、一種の才能であった。

祖母も父も、彼に敬愛されていると思い込まされた

(中略)

まさかあれほど真剣に耳傾け、同意を示してくれるアレクサンドルが、心の奥では、聞いてやったのだからそれで十分、で済ませているとは想像もできなかった。

 

なんと人間くさい話だろう。

 

「いるよね、こういう人」

 

相手を不快にさせない文化に身を置く日本人として、どうにも身近に感じてしまう。

 

それにしてもロシア人に「愛想笑い」ができようとは、なんとも皮肉な話である。

 

ちなみに、いま「ロシア人」と書いたが、元をたどるとロマノフ家はロシアのルーツではない

のちのロマノフ王朝と因縁も深い、ドイツの家系だ。

 

エカテリーナ二世は「外国から来た妃」と見下されないようロシア人になりきるつもりで大変な努力をしたそうだが、そもそもロマノフ家自体ロシア人ではなかった。

 

なんかちょっと複雑な気持ちになる。

 

名画『ヴォルガの船曳き』で読めるロシアの時代遅れ感

 

本書には肖像画のほか、風俗画、作者不詳の風刺画、歴史画などじつに80枚以上もの写真が載っている。

 

そこに名画とあわせて時代や王家に絡んだ中野さんの解説、解釈が入る。

おかげで「見たことはあるけど深い意味までは分からなかった」ものがわかるようになった。

 

私が一番印象的だったのは、私も大好きなロシアの画家レーピンの作品『ヴォルガの船曳き』である。

 

ヴォルガの舟曳き

イリヤ・レーピン作『ヴォルガの船曳き』トレチャコフ美術館

 

私は実物をトレチャコフ美術館やレーピンの画集で見たことはあるが、私の感想としては

苛酷な貧民層の仕事なんだな

くらいの認識だった。

 

しかしこの絵の本当に意味するところはこうだ。

 

遠くに蒸気船が見え、すでに帆船の時代は終わっていることが示される。

 

で、よくよく絵を見てみると、たしかに右後方はるか遠くに蒸気船から噴き出す蒸気が見える。

 

ロシアが時代遅れである

という理由がここにあった。

 

西洋と対等になるにはどういう技術や人間の使い方をすればいいのか。

ピョートルの時代から200年経っても、ロシアはわかっていなかったということになる。

 

ロシアは文明後進国であり、ピョートルが嫌った古くさいロシアのままだったということだ。

 

日本人女流イコン画家 山下りん

 

山下りん(1857~1939)明治時代でおそらく唯一(?)ロシアに芸術留学した日本人女性

 

150年も前に女性が単身、外国へ留学できたことにとても驚いた。

才能だけではなく、運や努力も現代とは比べられないほど必要だったはずだ。

 

(こういうとき一番うるさそうな父親が、りん7歳のときに死去しているのも関係あるかも?)

 

山下りんはエルミタージュ美術館に通いつめて模写をする日々だったそうだが、紆余曲折を経て彼女の作品は現在、そのエルミタージュ美術館に所蔵されている。

 

本書にも山下りんの作品は載っており既視感があると思ったら、私もエルミタージュで見た記憶があった。

 

自分の絵が大好きだったエルミタージュ美術館に飾られていることは、りんにとって最上の幸せかもしれない。

 

ロシア皇帝殺されすぎ

 

王侯貴族、資産家の骨肉の争いは今も昔も変わらない。

 

それで思うのは、やっぱりロマノフ家は殺し、殺されすぎてない?ということ。

 

  • ピョートル大帝は実の息子を死刑に処す
  • ロマノフ家に生まれたというだけで戴冠した赤子のイワン六世は幽閉され、成人してから刺殺される
  • ピョートル三世は妻のエカテリーナ(二世)に殺される
  • パーヴェル帝は息子からの許可が出て間接的に殺される
  • アレクサンドル二世はテロで爆殺される
  • ニコライ二世は革命で銃殺される

 

他国の王族の歴史は詳しくないので比べられないが、なんだかロシアの宮廷ってきらびやかというより、どうにも血なまぐさい感じがする。

 

殺されるには殺されるだけの理由はあったはずだが、基本的に帝位につかなければ殺されなかった可能性はある。

 

ただし農民として生まれていれば労働力を搾取され、もっと簡単に死んでいたかもしれないけれど。

 

歴史に名を残した皇帝たちの死の影には、名もなき何百、何千万人の人々の死が隠れていることを忘れてはいけない。

 

華やかな宮廷ではなく、闇の深い人間関係を想像してドキドキする。

そんな楽しみ方も本書のひとつである。

 

本書は絶対にカラーで読んでほしい

 

kindle アイコン

 

本書はぜったいカラーで読んでほしい作品だ。

(おそらく他の中野作品もそう)

 

私はkindle大好きでkindleリーダーも持っているが、kindleの端末はモノクロ表示なので本書を読むのにおすすめできない

 

  • kindleアプリをタブレットに入れて読むか
  • カラー表示できる電子書籍リーダーをタブレットで使用すべき

 

スマホでもkindleアプリはダウンロードできるが、本書は名画を大画面で見るのが醍醐味なので、タブレット端末かカラー表示できる電子書籍リーダーの使用をおすすめする。

 

\kindleをカラーで読める!/

 

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カラーで、なるべく大振りのサイズで読んでほしい。

載っている絵画や写真をすみずみまで眺めてほしい。

そんな作品である。

 

 

 

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